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「な!なんで朝比奈が謝るの!?突き飛ばした俺が悪いのに……」
「ごめん!!本当に、ごめん。東雲は何も悪くない。悪くなんかない」
俺の言葉を遮るように朝比奈は被せてそう言った。顔をあげた朝比奈の目は、赤くなっていた。
「ごめん……俺、東雲のこと、好き。ずっと前から、好きだった。ごめん」
え?
「そ、そんなの謝ることじゃなくない?俺だって朝比奈のこと好きだよ?」
「そういうんじゃなくて!そういうんじゃなくて……恋愛対象として、す、すっ、好き、でした……」
語気が強くなったと思ったら段々小さくなって最後はフェードアウトしていった朝比奈の言葉に、俺の思考はほんの数秒だけ停止した。
―――今まで健全に女子を好きだった男でさえも、お前と関わると一発で好きになるし、お前を見てるとムラムラしてくるの!
―――好きだーとか言われても、俺も好きだよ、だって俺たち友達だもんなっ☆みたいな無邪気という名のエグイ返事してたんだろ、どーせ
佐々原の言葉がグルグルと頭の中を駆け巡った。
「前から、って、ぐ、具体的にいつから?」
「えっと、入学してすぐくらい……」
―――あとは、告白して引かれるのが怖くて出来なかったかのどっちかだな。
―――俺も昔、好きだったんだよ。東雲のこと
これじゃあ、佐々原のときと、おんなじじゃん。
「……朝比奈、ごめん」
「あー、いや、うん、最初から付き合えるなんて思ってなかったし、東雲がそういう目で俺を見てくれることはないって分かってたし……」
「そうじゃなくて、本当に、ごめん。気づかなくて……」
なんで俺ってば、こんなに人の気持ちに対して鈍感なんだろう。俺の何気ない言動ひとつひとつに、もしかしたら朝比奈は振り回されていたのかもしれないと思ったら本当に申し訳なくて、ごめん、としか言葉が出なかった。
「ごめんなさい……本当にっ、ごめん、なさいっ……!」
「ちょ、東雲っ!」
肩を震わせ、手の甲で必死に涙を抑える俺を見て、朝比奈はオロオロとしていた。謝ってるのに、結果的にまた迷惑を掛けている。やばい、悪循環。分かってるけど、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいで、押しつぶされそうだった。
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