dark moon

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「わかった……むしろ、東雲にそう言ってもらえて本当にありがたいっていうか、嬉しいっていうか……マジで、ありがと」 朝比奈はホッと安心したような顔でそう言ってくれた。 「さっきは本当にごめん。ちょっと、その、魔がさしたっていうか、今まで溜め込んできたものがドカッと爆発して……もう、そういうことはしないから、ごめん」 「いや、俺も、悪かったし……気持ちを知らないとは言え、先に抱きついたりしたのは俺の方だし……今後は気をつけます」 「うん。その方がいいと思う。東雲のまわりは俺みたいに勘違いしたり、理性保てないヤツが多いから」 「……はい、すみません」 もう、本当、謝るしかない。 俺が男にモテる、欲情される、佐々原の話を聞いたときは、んなまさか、そんなことあるわけない、好きだったのも佐々原だけ、頭の中でそう思ってた。だけど、さすがに朝比奈まで俺のことを好きだったとなると、佐々原の言う通り、もう少し自覚した方が良いのかもしれない。 男子にそういう目で見られることが多い、ということを。 ちょっとくらい自意識過剰になっといた方が俺の場合はちょうど良いんだと思う。その方が佐々原や朝比奈のように傷つけなくて済むから。 そういえば、前に、三日月先輩がこんなことを言っていた。 ―――好きな人に、その気もないのに優しくされる方が余計傷つくんだよ。望みがないならいっそバッサリ切ってもらった方が諦めがつく。中途半端に優しくするのが、イチバン相手を傷つけるし、そっちの方が悪だと俺は思う 今なら先輩の言ってたこと、ちょっと分かる気がする。もっとも、俺の場合は、相手の気持ちにすら気づいてないっていう、根本的なところに問題があるわけだけど……。 「あー、でも、告白したらちょっとスッキリしたわー。東雲には申し訳ないけど、告白して振られたからハイおしまいってほど簡単に気持ちの整理はつかないから、しばらくは東雲のこと、やっぱりそういう目で見ちゃうと思うんだ……あ!もちろん手は出さないから安心して!でも、しばらくは、うん……東雲に好きな人か彼女が出来ない限り引きずりそうだな」 朝比奈は苦笑い気味にそう言った。
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