dark moon

10/24
前へ
/168ページ
次へ
「……三日月先輩」 「うん?」 「先輩が言ってたこと、ちょっとだけ分ったような気がしました」 「言ってたこと?」 「好きじゃないのに優しくするのは相手を傷つけるって話です」 「あー……」 「ただ俺は、意図的に優しくしてるわけでも、思わせぶりなことして期待させてるわけでもないんです。そんなつもりは全くないんですけど、結果的に傷つけちゃって……俺の言動ひとつひとつで振り回してるんだと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいなんですけど、でも、俺昔からこんなんだし……今さらどうしたらいいかよくわかんないっていうか……」 だって、大好きな友達がいたらやっぱり仲良くしたいし、ふざけあいたい。ちっちゃい頃からずっとそうしてきたから、今さら自分の性格見直して改善してくって結構難しい。ほら、よく言うじゃん、『三つ子の魂、百まで』って。俺のこの性格は3歳にはすでに形成されてるわけだから、直そうにも手立てがないっていうか、善処のしようがないっていうか……。 眉間にシワを寄せ、首を傾げていると、前を歩いていた先輩が振り返って、俺の眉間に人差し指をトン、と当てた。ふいに触られ、体がビクリと反応する。 「あーあー、可愛い顔が台無し。そんな深く悩む必要ないって」 「ちょ、また他人事だと思って……」 根拠もないのに、どうにかなるって、みたいな楽観的な先輩の言葉は本当にムッとする。顔の前にあった手を払いのけると先輩はクスリと笑った。 「東雲の場合、好きな人が出来たら自然とそういうことしなくなるタイプだと思うんだよね」 「はい?」 その言葉の意味をすぐには理解出来ず、俺はまた首を傾げてしまった。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1100人が本棚に入れています
本棚に追加