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え……え……えっっ?
「ちょ、せ、先輩っ!」
「ん~?」
「い、意味っ、わかんないんです、けど!!」
「あは☆やっぱ?だろうね~。でも俺は今ので分かったよ?東雲の心ん中♪」
「はぁ!?」
……む、ムカつく!なんだこの妙に勝ち誇った感は!!今ので俺の心ん中が分かった!?はっ!そんなわけないしっ!絶対そんなのハッタリだしっ!
「あはは、本当、東雲ってば可愛い」
「黙ってください!」
三日月先輩になんて分かってたまるか、俺の心の中なんて。
「ああ、そうそう」
不機嫌になった俺のことなど気にもせず、先輩は何か思い出したような口調で言うと再び足を止める。
「今度は何ですか」
しょうもない話だったら無視しよう。
そう思い、目を細めて先輩を睨む。先輩は空を見上げてつぶやいた。
「実は、昨日が三日月だったらしいよー」
「え?ああ……」
そう言えば、昨日ふいに窓から見えた月は綺麗な弧を描いた三日月だった。
「満月から欠けてくのって、意外とあっという間だよね」
「そうですね」
「残念だけど、約束は約束だから。もう一緒に寝るのはおしまい」
「……あ、そっか」
―――しばらくの間、俺と一緒に寝てくれない?
―――あの月が、次の三日月になるまででいいよ
そうだった。そういう約束だった。そうか……。これからは、ひとりで寝ていいんだ!
「付き合ってくれてありがとねー」
「え、ああ、いえ……勝負は勝負ですから」
賭けに挑んで負けたのは俺の方だしな。
「あ、あの、先輩っ!」
グッと握り拳に力を入れる。
先輩に聞かなきゃ。添い寝が終わるなら、ここではっきり先輩が何考えてんのか聞いておかなきゃ、なんかあやふやなままで終わっちゃいそうだし!
「なに?」
簡単なことじゃん。先輩は俺のことどう思ってるんですか、って聞くだけじゃん。そうそう。それだけそれだけ……。
「……東雲?」
「え、と……あの、三日月先輩は……お、俺っ、のこと、どっ……」
「あっ!!東雲~っ!!!!」
息を大きく吸い込んだタイミングで聞き覚えのある声がし、次に出てくるはずだった言葉は見事に遮られた。
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