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「東雲ー!たっだいまー!」
「あ、真田」
前方からバカみたいに大きく手を振りながら走ってきた真田に、さっきまで「言ってやるぞ!」と思っていた意気込みは消沈した。
真田って、ほんっと、毎回毎回、ものすごいタイミングで登場するんだけど、一体なんなの……。
「あ、三日月先輩、こんにちはー!」
「はい、こんにちは」
「東雲~っ!会いたかったぞー!」
律儀に先輩に挨拶を済ませ、勢いよく抱きついてこようとした真田をサッと避ける。真田はスカッと空気を抱きしめていた。
「じゃ、俺、先に寮戻ってるね」
「あ!はいっ、すみません」
気を使ったのか先輩はニコ、と微笑むと先に寮へと帰っていった。
あー……もう、真田のせいで完全に聞きそびれた。
「真田の空気の読めなさって良いときもあるし、悪いときもあるよね……」
「え!?なに!?会って早々悪口!?」
「ちょっと、裕樹くん!走りだすの早すぎ!」
少し遅れて瀬野が呆れたような顔でやってきた。
「あっ!瀬野~っ!おかえりーっ」
「ちょ、東雲、俺と瀬野の扱い違う!」
「ただいま、律くん♪」
「2人で一緒に帰ってきたんだ?」
「聞いてよ!」
真田の存在を無視して瀬野と話を続ける。
「たまたま乗った電車が一緒だったみたいで、駅着いたら裕樹くんがいたからまぁ、ついでにって感じで」
「そっか」
あくまで、ついでにって扱いになってる真田にどこか哀れみを感じていると、瀬野がちょこちょこっと近づいて可愛い顔で俺を見上げる。
「ねぇねぇ、律くん♪おかえりのチューは?」
「え?」
いつもならここで悪ノリに乗っかるとこだけど……さすがにさっき気をつけなきゃって思ったところだし……。
「チューはナシっ」
俺はニコッと笑うとチューする代わりに瀬野の頭をワシャワシャとなでた。
「え~っ、つまんないの……」
不満げな瀬野の表情は、本当に女の子みたいで可愛い。
「残念だったな瀬野!東雲の唇は俺がもらうことに……っ!」
「キモイよ真田」
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