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「うん」
水沢先輩は本当に物静かで穏やかそうな人。出来ることなら真田と部屋を交換したいくらいだ。きっと水沢先輩も騒がしい真田と一緒だから俺と同じことを思っているに違いない、とか勝手に予想してみる。
「味噌汁こぼしちゃうくらい何考え込んでたの?」
「えっ!?あーいやー……」
「まあ、視線が梓に向かってたから聞くまでもないんだけど」
からかうようにクスリと笑う水沢先輩にギクリとする。
「別に、見てないですよ。たまたま視線がそっちに行ってただけです。たまたま」
「そう」
「水沢先輩は三日月先輩と仲良いんですか?」
三日月先輩はいつも違う友達と過ごしてることが多いし、水沢先輩は寮では結構ひとりのことが多いから接点があるようには見えないんだけど……でも、梓って呼ぶくらいだし親交はあるのかな?
素朴な疑問をぶつければ、水沢先輩は下がってきたメガネを指で軽く押し上げた。
「仲が良いというか、まあ、腐れ縁、みたいな感じ。小中も一緒だったから」
「へー!それで高校も一緒ってすごいですね!しかも寮まで」
「家が遠いからね、仕方なく」
朝比奈と真田、みたいなもんなのかな。ふたりみたいに顔を合わせればケンカってことはなさそうだけど。まあ朝比奈と真田は精神年齢が小学生みたいなとこあるからしょうがないのかもしれないけど。
「あの~、水沢先輩にこんなこと聞くのもどうかと思うんですけど、三日月先輩って昔からああなんですか?」
「ああ、って?」
「だから、そのー、なんていうか、おちゃらけてるっていうか……」
「ああ、軽薄かどうかってこと」
「そういうこと、です」
ズバ、と的確な言葉を出され思わず納得する。たしかに三日月先輩ほど“軽薄”という言葉が似合う人物もいないだろう。
「東雲くんが梓に対してどんなイメージを持ってるかは知らないけど、意外と梓はマジメだよ。本当普通。軽薄に見えるのは、そういう、フリ、をしているだけなんだと思うけど」
「フリ、ですか?なんのために」
軽薄なフリをして一体なんのメリットがあるっていうんだ。
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