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「し、知りたい、ですけどっ、知るために、なんで、先輩、と、こういうこと続けなきゃ、いけ、ないんです、か?」
「要は勉強と一緒。話で聞くより、実際に問題を解いてみることで理解出来ることってあるでしょ?東雲もおんなじ。他人にあれこれ言われたり、一般論をムリヤリ自分の頭に入れようとしてもムダ。ちゃんと、感覚で……」
「ぅ…っん!」
スーッと首筋を撫でる細い指。
「頭だけじゃなくて、カラダでちゃーんと感じて……」
耳の奥までとろけてしまいそうなやわらかい吐息。
「そこで、初めて分かる。どうして俺が平気なのか。俺にどう思われてたいのか」
やばい、どしよ、なんか、限界。
触られたところが熱くなって、熱を帯びていく。
涙で視界がかすんでいく。
「どうする?続ける?それとも、やめとく?決めるのは俺じゃない。東雲だよ?」
続ける?やめる?どっちが正しいのかなんて分からない。
だけど、続けてみて、朝比奈たちと先輩との違い、“何か”が分かるのなら、ありえないことかもしれないけど、続けてみても良いって、そう思う。
「……続けて、みる」
俺、間違ってんのかな。
ゆっくりと、自分に言い聞かせるみたいに答えた俺に先輩は再び唇を落とした。今度は軽くじゃない。深く、深く、ゆっくりと、味わうみたいに、口の中全てを先輩が支配していく。
先輩で、満たされていく。
キス、してる。先輩とキスしてる。
なのにやっぱり、ほら、嫌悪感はまるでない。
「……どう?いや?」
チュ、と音を立てて唇を離すと、親指でそっとなぞる先輩。
「嫌じゃ、ない、みたい」
正直な感想。嫌じゃない。気持ち悪くない。なんていうか、こう、頭がふわふわ~ってして、体中がポワーンとする。バカっぽい感想かもしれないけど、今の状態はそういう擬音語でしか伝えられない。
「じゃあ、今度は目を閉じて」
「は、はあ」
「誰でも良いから仲の良いお友達頭に浮かべて」
誰でも良いからと言われると真っ先に出るのはやっぱりつい数分前まで一緒にいた真田なわけで、満面の笑みでゴハンを食べる姿が容易に浮かんだ。
「そのお友達に、されてると思ってみて?」
また唇が重なる。これが、真田?真田と、キス?この唇が真田?
唇を割って舌先が侵入しようとした瞬間、体中に悪寒が走る。
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