dark moon

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「……ちょっ!!やだ!!」 パッと目を開ける。気づいたら俺は先輩の両肩をわしづかみし、全力で押し上げていた。 「あ……すみません。つい……」 先輩の顔を認識して、そこでようやくホッと安心する。 「やっぱりお友達は無理?」 「……無理、ですね。どう頑張っても」 てか、そもそも頑張る必要なんてないんだけど。 「ふぅ~ん。でも、俺は平気なんだ?」 先輩はクス、と笑うと俺の手をとって、まるで絵本の王子みたいに手の甲にキスをした。 「だったらなんなんですか」 妙に勝ち誇った感がムカつく。おまけに、事実であることが余計にムカつく。ああ、そうですよ。先輩は平気なんですよ。だったらなんなんですか。 「いや~?別にー……なーんで俺だけ平気なんだろうね~」 「それが分かってたら苦労しないし、こんなことしてないです」 「そっか、だよね~。この先、東雲が自分の気持ちに気づいたらどうなっちゃうんだろうなぁ。もう、そのときの反応が今から楽しみで楽しみで……あは、ゲロ吐きそう」 ニタリ、と笑ったその表情に背筋がゾクッとした。 「は!?やめてください!!」 てか、キスした直後にそういうこと言うのやめてもらえませんかね!? 「冗談冗談。物の例えってもんでしょうが」 「ふっ…あっ……」 口の端をペロリと舐め上げられると、体がますます熱を帯びる。唇、歯列、じっくり舐め上げられて、最終的に自分の舌と絡み合う。溶けるようなその感覚は今まで味わったことがない。キスなんて今の今までしたことなんてないし、まさかその初めての相手が好きでもない先輩って一体どうなんだ。おかしいよね、おかしいに決まってる。 でも……。
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