dark moon

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「気持ち良い?」 ちょっと触れられただけで、体はビクンと跳ねて仰け反る。重ねていた手にも思わず力が入る。先輩も同じ力で握り返してくれた。 「もっと気持ちよくさせてあげよっか」 「やだっ…あ、もっ……は、あぁ」 声より吐き出される息の方が多くて、苦しい呼吸が部屋の中でやけに響いて聞こえる。必死に唇を噛み締めているうちに、じわり、と血の味が滲んだ。だけど、そんな痛みより、今は快感の方が上回っていてどうしようもない。 体の奥の方からこみあげてくるその感覚は昨日溺れたあの快感と同じもの。すぐにそこまで迫っている。 「……せ、ぱぃ……先、輩、ま、って」 やっとの思いで吐き出された言葉に先輩の動きが止まり、顔を上げた。 「なに?」 「……す」 「え?」 「キス……して?」 キス、して欲しい。昨日味わってしまったあの感覚。あれほどまでに気持ちよかったことは今までない。昨日と同じように、逝くときは唇を重ねていたい。舌を絡めて、吐きたくなるほど甘ったるい空気の中で、全てを吐き出したいと、そう思った。そこに理性だの建前なんてもんは無くなっていて、とにかく、純粋に、先輩の唇が欲しいのだ。 「……はやく」 やばい、も、ほんと、でちゃ、う。 涙目で懇願すれば先輩は応えるように口を開けて、舌を絡める。 苦しい。なのに気持ち良い。それでいて、先輩の腕の中は、 「……律」 心地良い。 その存在を確かめるように、先輩をぎゅっと抱きしめかえす。ドクドクと激しい心音は自分のだろうか、それとも、先輩の?もしくは、お互いの? 先輩を抱きしめることは今まであったはずなのに、あのときとは違う感覚が、感情が、芽生えたような、そんな気がした。
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