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「あ、ああ、うん、そうだけど。ありがと、朝比奈」
拾ってくれたことと、再度言ってくれたことと、二重の意味も込めお礼をすると朝比奈は「フゥ」と小さくため息をついた。
「よりによってアレじゃあなぁ……」
「へ?」
「戦う前から負けたってかんじ?戦意喪失?せめて真田くらいにしといてよ、そこはさ~あ~」
「え!?そうなの!?えっ!?」
「残念だったな周防」
「ま、マジで……?」
「ねぇ、ふたりともなに言ってんの?」
ガックリ肩を落とし落ち込む朝比奈に、目をまんまるくして慌てふためく周防。そんなふたりを見ながら俺は眉をひそめて首を傾げる。なぜに真田が出てきた?
「あーあ、東雲なんて置いて先行こうぜ」
「え、ちょっと!なに!その急な意地悪は!!」
スタスタと先を歩き出すふたりを慌てて追いかけると、朝比奈はくるりと顔だけ向けて目を細めた。
「東雲、自覚あんのかないのか分かんないけど、顔、超赤いよ。洗って冷やしといで」
「え?そう?そんなに?暑いからかな」
確かに、ポーッとする感じはあったけど、顔洗うほど赤いの?熱はないと思うんだけど。
「もー!本当無自覚って怖い!!天使って怖い!もはや天使超えて悪魔!東雲悪魔!!」
「まあまあ落ち着け朝比奈よ」
「だって……!うわああーん!俺もフェロモン欲しかったああ!!」
「ないものねだりすんなって……じゃ、先行ってるな」
「……え」
なんだったんだあの2人のやり取りは。そして、なんなんだ朝比奈は。まるで駄々をこねたときの真田に瓜二つだったけど。情緒不安定なのかな……え?それってもしや俺のせい?俺が振ってからおかしくなったとか!?いやいや、でも、だとしたらもっと前からおかしいだろうし、そもそも朝比奈って前からおかしな発言ちょいちょいしてたし、変なこと言うのは今に始まったことじゃないか。
そう納得し、ふたりの後ろ姿を見届けたあとで近くのトイレに入った。
手洗い場についてる鏡の前で自分の顔を確認する。
「別に、大したことないと思うんだけど」
確かに赤いっちゃあ赤いけど、気にするレベルではない気が……まあ、指摘されてから確認するまでに赤みが引けたのかもしれないけど。
自分の手の平をそっと頬に当てる。
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