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***** *** ** 階段を降りていくと、私の足音に気付いたのか、更科先輩がゆっくりとこちらを見上げた。 眩しそうに顔をしかめ、目の上に手をかざす。 「――そら?」 「……」 黙って立っていると、先輩はフイと前を向いてしまった。 階段に腰掛けたまま、本の続きを読み始める。 「戻った方がいいんじゃない? もう予鈴鳴ったよ」 先輩の柔らかな髪が、陽の光を帯びて金色に輝いている。 きれいなえりあしに見惚れていると、授業の始まりを知らせる本鈴が聞こえてきた。 「先輩こそ……」 小さな声で、私は呟いた。 「いつもいつもサボってると、卒業できなくなっちゃいますよ」 すぐに何か言い返して来ると思ったけれど、返事はなかった。 自分の発した可愛げのない言葉が、非常階段の隅にぽつりと置き去りにされた気がした。
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