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「放送部、入ったんだって?」  読んでいた文庫本から顔を上げると、前の席の須藤恵理奈がくるりと椅子に横座りして体をこちらに向けた。  現国の自習時間。  風邪で体調を崩した奈津川先生の代わりに監督役の副担任が教壇の脇に座っているが、席を立たなければ特に何も言われないので、課題の作文を書き終えた生徒たちはそれぞれ好きな時間の潰し方をしていた。 「誘ってくれたらよかったのに。わたしも見学行きたかったな」  恵理奈は拗ねたように言って私の机に頬杖をついた。 「ごめん。なんか、タイミングがいろいろ重なって、流れで」  笑顔を作って答えると、ふうん、と不満そうな声。 「――会った?」 「え?」 「会ったよね。当たり前か。部長だもんね、あの人」 「……」  更科ミツルのことを言っているのだと分かり、わたしは何となく視線を伏せた。 「会ったよ。話もしたし」 「へえ。どうだった?」 「どうって……普通だよ」 「かっこよかった?」 「……まあ、顔はきれいだと思うけど」 「どんな人?優しい?」 「どうかな。まだ分かんない」  私の曖昧な答えが気に入らないのか、恵理奈はきゅっと唇を歪めた。
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