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返事くらい、してくれてもいいのに……。 先ほどまでの勢いはすっかり失われてしまった。 何だか惨めな気持ちになって、所在なく立ち尽くす。 読書に熱中する更科先輩の背中を恨みがましい目で見つめているうちに、――ふと気づいた。 ……あれ……? もしかして。 タンタンタン、と階段を3段降りて、背伸びをして先輩の手元を覗き込む。 ――間違いない。 先輩は、本を読んでいるフリをしているだけだ。 だって、――ずいぶん長い時間こうしているのに、先輩は一度も本のページをめくっていない。 そう思ってよく見ると、先輩の耳の裏あたりが何となくこちらを意識しているような気がしてきた。 こうやって時間を稼いで、私が立ち去るのを待っているのかもしれない。 「……」 ――いなくならないもんねっ。 なんだか腹が立って、わたしはスタスタッと階段を降りた。 先輩の隣にすとんと腰を下ろし、ぷいっとそっぽを向く。
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