近くて遠い人

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誰かの陰謀だな。 なんて卑屈に笑ってみせた。 すると、前方からあからさまな舌打ちが聞こえた。 彩夏が舌打ちをした……というわけではなさそうだ。顔を見ればわかる。 舌打ちの正体は……彩夏の隣の席に座っている男子生徒、鈴村貴司(すずむらたかし)。 短髪がよく似合う、クラスではお調子者として扱われている男子だ。 いづきとは高校で知り合い、まあまあ仲良くやっている。 「いいよなあ、イケメンは!」 いきなり舌打ちをしたかと思えば、そんなことを言い出した。 おまけにいづきの方を向いて、「な!」と同意を求めてくる。 いづきはやけに刺々とした苦笑を、口許に浮かべるという微妙な反応をするだけ。 「俺もあんな風に女子からちやほやされてみたいもんだぜ!あーあ、うらやまし!」 「やだ鈴村くん、そんな願望あるの?気持ち悪い」 「ストレートすぎるだろ!」 「私嘘つけない子だから」 性だかなんだかは分からないが正直な気持ちを抱く鈴村と、そんな健全な男子高生を気持ち悪がる彩夏。 こんなやり取りも、毎日のように行われている。 二人の会話は聞いていて楽しい。 いづきはそう思えた。 「いやいやしかし、あいつもおかしいよな」 「鈴村くんほどじゃないけどね」 「うん俺ほどじゃないけど。普通女子に囲まれたりしたら鼻の下伸ばすなりなんなりするはずだろー?」 男性全員がそうとは限らないと思うが。 鈴村の言うように鼻の下を伸ばすタイプ、本人は気取っていないつもりだろうが逆に見てる側からしたら気に障るタイプ…… 他には、悠太みたいに『性に興味無さそうな振りをする』タイプ。
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