[後日談]

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「好きです、付きあってください!」 「……ごめん、聞いてなかった。もう一回言ってもらえる?」 季節は十二月初旬のやけに風が冷たい冬。 放課後、いづきたちと帰ろうとしていたところを一人の女子生徒に呼びとめられた悠太は、場所を変えて話していた。といっても会話にはなっていないようだ。女子生徒の勇気を出した告白も綺麗に悠太の耳からすり抜けていった。 女子生徒はもう一度繰りかえすがやはり伝わらない。告白の堂々巡りだった。 そんな悠太たちの様子を物陰から覗いていたのは、いづきと鈴村。悠太に先に帰ってていいと言われていたがそういうわけにもいかなかった。そう、主にいづきが。 「くーっ、今月でもう八人目だぞ……!」 そう言って女子生徒を睨みつけながら、ぎりぎりと歯を鳴らすいづき。十二月になってまだ一週間も経っていないのに、悠太に告白する女子生徒は今月で八人目だという。 それはすごいことだが、いづきが人数を把握しているのもやばいなと鈴村は思った。 「い、いやあ、相変わらずモテるんだなあ」 嫉妬心剥きだしのいづきを横目に、鈴村は気まずそうに言ってみせた。もちろんその言葉はなんのフォローにもなっていない。いづきはさらに不機嫌そうな顔になる。 「最近の悠太、なんか性格が丸くなっただろ?」 「え? ああ、そうだな。あんまり毒吐いてるイメージないかも。人って変わるもんなんだな」 一年前の悠太なんて言葉が凶器みたいなものだった。むやみやたらと毒を吐かなくなったのはいいことだと思う。 なのにいづきはそれに問題があるような言いかたをしている。気になった鈴村は「それがどうしたんだ?」と一言。 「女子に対しても対応がちょっと柔らかくなったんだ。冷たいに変わりはないけど最初の頃よりは全然……」 「うんうん」 「そのせいで今まで罵倒されるのが怖くて見てるだけだった女子たちが、今は戦闘モードに入ってるんだ」 「戦闘モードって」 たしかに今の悠太ならまともに取りあってくれるかも、と思う女子も多いだろう。今、目の前で繰りひろげられているあれはまともと言ってもいいのか微妙なところだが。
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