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翌朝。登校中いづきはずーっとにこにこしていたので、鈴村は「ああ昨日はお楽しみだったんですね」と察した。
しかしその隣を歩く悠太は見事なまでのポーカーフェイス。ある意味凸凹カップルだとも思った。
このカップルに挟まれて一緒に登校することに抵抗がないわけではない。なんせそのカップルの片方は自分が好きだった相手だから。なんならまだ好きかもしれない自分がいる。
そう簡単には戻れないよな、なんて。
「俺も恋人ほしいなー」
うっかり口に出してしまった。いづきと悠太が立ちどまり、驚いたようにこちらを見ている。なにもそんな驚かなくてもいいのに。鈴村は首を傾げた。
「なんだよー」
「いや、急に恋人ほしいとか言いだすから」
「俺だって人肌が恋しくなるんですー」
鈴村を振った身としては反応しづらい言葉だった。いづきはなにも言えなくなってしまう。
なにを真面目に受けとっているんだか、と鈴村は笑った。
「冗談だよ、冗談! な、平沢」
「僕に振らないでよ」
はあ、とため息をついて歩きだす悠太。いづきはそれにつづいた。
鈴村は一歩遅れて二人の後ろをついていく。
これから二人は付きあっていく中でたくさん悩むだろう。そうしたら真っ先に自分に相談してほしいと、二人の背中を見て鈴村は思った。
二人の悩みをたくさん聞いて、二人が幸せになるのをこの目で見届けたい。
その頃にはいづきに対する気持ちも薄れているはずだ。ふつうに親友だと思える日が来るはずだ。
もう少し時間はかかりそうだが、それが不思議と辛いとは思わなかった。
end
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