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五限目。
昼食を済ませた生徒たちは、満腹のせいかうとうととし始めている。
しかし、寝てはいけない。
何故なら、今行われている授業は理科だから。
梅林が担当する授業で居眠りだなんて、考えただけでも震え上がってしまう。
いづきは必死に目を見開いていた。
正直、梅林の声が頭に入ってこないくらいには眠たかった。
斜め前の鈴村なんか頬杖をついていて、もうかれこれ五回はがくんとなっている。
寝るな鈴村。死ぬぞ。
という気持ちを込めて鈴村の背中を見つめる。
これは効いているのかもしれない。
やばい、眠い。
鈴村はなんとか耐えているようだが、いづきの方が危なくなってきた。
瞼が重い。
一瞬だけ梅林の声が遠退いた気がした。
右手に持っているシャーペンが、机の上に落ちる。
「おい」
目を閉じてしまった瞬間、あの低音ボイスが耳に張り付いてきた。
いづきの体はびくりと跳ね上がり、慌てて顔をあげる。
まずい、と思ったのは最初だけだった。
自分に向けられて放たれた言葉かと思い見上げたものの、梅林はそこにはいなかった。
どうやら梅林は別の生徒に声をかけたようだ。
その別の生徒というのが……悠太だ。
悠太は爆睡しているようで、机に突っ伏していた。
教室が嫌な静寂に包まれていく。
授業を受けているときとは、全く別の静寂。
この異様な空間に、思わず唾を飲み込んだ。
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