信じたくない出来事

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大変残念なことではあるが、これは理科担当である梅林に聞いた方が早そうだ。 本当に嫌で嫌で仕方がないが、その方が早く帰れる。 少し我慢すればいいだけの話。 さっさと聞いて、さっさと帰る。 そうしよう。 確か職員室に来いと言っていたはずだ。 シャーペンをしまった筆箱を鞄の中に入れる。 その鞄を肩にかけ、プリントを手に取る。 すぐ帰れるよう、鞄も持っていくことにした。 女子の無駄に高い声を鬱陶しく感じながら、いづきは教室を出ていく。 ギャルに近い女子たちを刺激しないよう、ゆっくりと扉を閉めた。 はあ、と大きく深いため息をついて……職員室を目指し歩き始める。 足が重たい。脳が拒否反応を起こしているようだ。 だが、これを乗り越えなければ明日は来ない。 辛抱しなくては。 **** 「失礼します」 職員室の扉を軽くノックしたあと、そう言いながら扉を開ける。 暑くなってきた季節ではあるが、まだクーラーはつけていないらしい。 廊下の温度と大差無かった。 ついでに言うと、職員室独特のコーヒーの香りが鼻についてむせ返りそうになる。 いつになっても、職員室は嫌いだ。 「あ、日下部くん。どうしたの?」 ちょうど席を立っていた荻原が、こちらに歩み寄ってきた。 意外と名前は覚えてもらってるものなんだな、といづきは驚きつつ…… 「えっと……梅林先生いますか?」 ここからじゃ職員室全体は見渡せない。 見る限り、いなさそうではあるが……。 荻原は「ちょっと待っててね」と笑顔で言い残すと、職員室の奥へと消えていった。 確認しにいってくれたのだろう。 それから一分も経たないうちに、荻原が戻ってきた。 「お待たせ。今ね、梅林先生いないんだって」 「あ、そうなんですか?」 「たぶん……理科室にいるんじゃないかな?」 自分から職員室に来いと言ったくせに、いないとはどういうことだ。 いやしかし、理科室にいるかもしれないということなので、とりあえず足を運んでみる価値はあるだろう。 わざわざ確認しにいってくれた荻原にしっかりと礼を言い、 「失礼しました」という言葉と共に職員室を後にした。 理科室は上の階だ。 教室の下の階でもある。
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