信じたくない出来事

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階段を上がるのも面倒だが、行かなくては。 もし理科室に行ってもいなかったら、自分はどうしたらいいのか。 いなかったらいなかったで、帰ったとしても文句は言われないはずだ。 いなかった方が悪いんだし。 ……本人の前では口が裂けても言えないけど。 あの時悠太に向けられた言葉。 もし自分が悠太の立場だったら、泣いていたかもしれない。 結構泣きやすい体質だし。 そんなどうでもいいことを考えているうちに、あっという間に理科室についてしまった。 扉の前に立つ。 鍵はかかっていないが、上の方についてある窓を見ると…… 電気はついていないようだ。 果たしているのかいないのか。 あの梅林なら電気をつけずなにか作業をしていても、違和感はないが。 恐る恐るノックをしてみる。 ……返事はない。 どうしたものか。 暫く考え込んだあと、いづきは扉へと手を伸ばした。 本当にいないかどうかだけを確認して、いなかったら帰ろう。 そう考えたのだ。 扉を開け、理科室の中に足を踏み入れる。 開けっぱなしというのもあれなので、扉は閉めた。 電気もつける必要はないと判断し、そのまま。 少し歩き教室の中央まで来る。 ……いない。 やはり留守か。一体どこにいるのか、あの教師は。 それにしても放課後の誰もいない理科室というのは、何故こうも不気味なのだろう。 怖いものが大嫌いないづきは、すぐにこの場を去ろうとした。 が、 ……なんだろう、この音は。 実は理科室に入ったときから聞こえていた、この……言葉じゃ言い表せないような音。 その微かに聞こえてくる音にまじって、小さな声も聞き取れた。 男か女か区別のつきにくい、甘ったるい声だ。 ……甘? いづきの思考回路が一気に熱くなり、爆発しそうになる。 この謎の音、甘い声。 え?なに?つまり……そういうこと!? 音の正体を理解してしまうともうとまらない。 心臓がものすごいスピードで音を鳴らし動いている。
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