信じたくない出来事

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**** 自室に入り、身を任せるようにしてベッドへと倒れ込んだ。 着替えなんて後回しだ。 枕に顔を埋めて、目を閉じる。 が、すぐに見開いた。 それはもう、目が乾くんじゃないかというくらい。 だめだ。目を閉じるのは。 閉じると理科準備室でのことが、ものすごいスピードで再生されてしまう。 フラッシュバックにも似た現象。 生々しい、あの出来事。 吐息、におい。 幼馴染みの見たことも聞いたこともない顔と声。 その全てが脳裏に焼き付いてしまっている。 昼に食べたものが、逆流しそうになった。 う、と口を手で押さえる。 あの時は逃げ出すことでいっぱいいっぱいだったが、こうして部屋で一人考えていると…… 自分は本当にとんでもないものを目の当たりにしてしまったのだ、という言葉にはしにくい感覚に襲われた。 男同士で、あんなこと……。 幼馴染みはホモだった…… いつから? 本当にそうなのか? 無理矢理襲われたとかではなく? 違う、違う。それは絶対ない。 襲われた人間が、あんな顔をするわけがない。 キスをして、なんて頼むはずがないんだ。 どうして……。 関係ない。もう幼馴染みなんて関係ないはずだった。 あの男がこれから先どんな人生を歩んでいくかなんて、自分には関係ないと思っていた。 自分を避けた幼馴染みなんて…… 「関係ない、はずなのに……」 どうしてこんなに、 引っ掛かってしまうのだろう。 信じたくないなんて、思ってしまうのだろう。 「分かんないよ……どうしたらいいんだよ……!」 それからいづきは、 一睡もすることなく朝を迎えてしまった。  
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