繋いだ手

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おかしい。絶対におかしい。 昨日の放課後のことを思い出す。 梅林に撫でられた頭。 普段からは想像できないくらい優しい声色。 おかしい。これは絶対におかしい。 いや、梅林の行動自体がおかしいわけではない。 おかしいのは紛れもなく、自分だ。 あんな、あんなことをされたくらいで…… ときめくなんて……! 「いやいやいやいやいや!!」 ときめいていない、断じてときめいてなどいない。 ちょっとどきっとしたけれど、あれは違う。そういうのじゃないのだ。 自分にそういう趣味はない。 ただ……梅林のあの手。 あの手で悠太にも触れているのかと思うと…… 何故か、 「あーもう!意味わかんねえ!!」 「うっさいわ!」 「ひっ」 ベッドの上で悶え苦しんでいると、カーテンが開き男が怒鳴り込んできた。 そう、実はここ……保健室。 いづきはまた、理科の授業を抜け出していた。 それはそうと、この怒鳴り込んできた男。 名は吉沢善弥(きっさわぜんや)。 保健室の先生、というやつだ。 まさかこうも早く会うことになるとは。 まあ、二日連続保健室に通って会わない方がおかしいのかもしれないが。 「なんやねんお前、しんどい言うから寝かせたる言うたのにえらい元気そうやないか。おお?」 梅林と同い年くらいだろうか。 梅林とはまた違った別の威圧を感じる。 やたらと絡みづらそうな……。 「い、いや、すごいしんどいです、俺」 「しんどいんならでかい声出すなや。びっくりするやんけ」 「すみません……」 「せやから餓鬼は嫌いや言うねん」 目の前で言っちゃいますか、それ。 梅林よりも質が悪い……気がする。 うるさくしたこっちが悪いのは認めるが……。
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