近くて遠い人

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小さい頃から……幼稚園の頃からの友人。 と言ってもいいか、分からない。 友人という表現があっているのかが、今のいづきには分からなかった。 幼稚園の頃は勿論、小学生や中学生時代は家も隣通しだったため、毎日一緒に登下校するほどの仲だった。 そう、過去形だ。 仲が良かったのだ。 中学二年の、あの日までは。 あの日……いづきが人生で初めて告白をされた日の翌朝。 告白され付き合ったことを報告し、祝福の言葉であろうものを受け取ったあのあと。 悠太と話すことはなくなってしまった。 いづきから話さなくなったわけじゃない。 声をかけても……避けられたのだ。 あの日まで毎日欠かさず一緒に登下校をしていたはずなのに、それも途絶えた。 家の前で待っていてもなかなか出てこず、インターホンを鳴らしてみれば出てきたのは悠太の母親。 「あの子ならさっき行ったわよ?……十分くらい前かしら」 なんて言われる始末。 何がいけなかったのか。 告白されたことを自慢げに話したから? それすらも分からなかったあの頃のいづきは、悠太と関わりを持つことを…… 諦めた。 自分の行動を悔いたか? 聞くまでもないはずだ。 いづきは……。 「平沢くんやっぱ冷たーい!」 「でもそこもいいよね!」 鬱陶しい、と笑顔で毒を吐かれても女子たちの反応は変わらなかった。 女子高生とやらは、何かとメンタルが強い。きっと鋼か何かで出来ているに違いないだろう。 ……確かに、悠太は小学生の時から女子からそこそこ人気はあった。 何せスポーツ万能で、成績優秀。 おまけに言えば容姿もその辺の男子なんかとは比べ物にならないほど、ずば抜けている。 漫画の中から出てきたのでは、と疑いたくなることも多々ある。 いやいや、しかし。 このモテっぷりは異常だろう。 クラスの女子殆どを食い放題出来るわけだ。 何故高校に入ってさらにモテ始めたのだろう? 理由は分からなくはない。 ……髪を切ったからだ。そう、それだけのこと。 人間、髪をいじるだけで変わるものなのだ。
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