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「すみません…。
ではお先に失礼致します」
頭を下げて東雲さんの歓迎会から
帰って行く前島チーフの姿を
不愉快そうに見つめる冬木部長の隣で
私は何とも言えない気分だった。
ずっと見て来たから
私には解ってる。
冬木部長が…前島チーフを
本当は愛してるって事。
だけど前島チーフは
あの人が来てから
冬木部長を見なくなった。
いつも前島チーフが
見つめているのは…
あの人…東雲遥斗さん。
小さくため息を吐き出して
日本酒を飲み干す部長に
たまらない気分になって
私は部長の耳元で囁いた。
「部長…今夜…
私で良かったら慰めましょうか?」
「えっ?」
「もう私も子供じゃありませんから。
全部解って言ってます」
一世一代の覚悟で言ったのに。
冬木部長はニコリと笑って
私の頭をポンポンと撫でた。
「宇佐美、お前飲み過ぎだよ」
…ガックシ。
やっぱり…冬木部長は…
前島チーフだけなのかな?
…だったら離婚して
前島チーフと結婚すればいいのに。
…だけどあの人…
東雲遥斗って人は…
どこか危険な香りがする。
東雲さんの隣にベッタリ張り付いてる
千夏のムカつく顔を眺めながら
私も日本酒を飲み干した。
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