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――生きている。本当に良かった。
「ちょっと、騎士様、次が来ましたわ!」
安堵も束の間、イリスが慌ててロックを呼ぶ。ロックは慌てず、出て来た魔物の腕を切り下す。例えどんなに強くとも、体が完全にこちら側へ出て来なければそれ程の脅威は無い。
周りにいた魔法剣士が冷静に魔物の体へ切り付け、魔物の出現を鈍らせた。
「イリス、ソフィアが助かったらしいぞ。後、凄い子がいた」
「その《凄い子》が姫様、アンナですわ。たぶん、近くにエディもいますわね。二人が戻ってきた以上、一騎当千。心強いですわ」
嬉しそうにイリスが答える。それはイリスだけではない。他の生徒達も明らかに表情が変わっていた。安堵、希望、そう言った前向きの物が学園の者を奮い立たせていた。
――たった一人の少女の存在がこうも勇気づける物なのか。
先程まで見えていた疲れも吹き飛び、勢いに乗っている、今の状況なら任せられるだろう。ならば、手薄の所へ行こうとロックは判断した。中庭を指差しながら言う。
「それじゃぁ、俺はあっちを手伝いに行く。流石に女の子二人だけじゃぁ、捌き切れないだろうし」
「女の子二人!? エディは何処に……そうですわね。いくら姫様だとしても女子二人は駄目ですわ。この場はワタクシに任せて、姫様達の護衛を騎士様に任せてもよろしいかしら?」
「じゃぁ、行って来るよ」
イリスに別れを告げると、二三段飛ばしで、ロックは音楽塔を降り、中庭へと駆けつけた。
「騎士様!」
ソフィアがロックに気づいて叫んだ。
「こっちに手伝いに来たぞ。他の人達は?」
「聖堂と実験室の方へ。音楽塔は騎士様とイリスがいるから安心だと思って」
上で見た時は、駄目だと思ったソフィアも、どうやら傷が完治して調子が良いようだ。視線をソフィアの先へ移すと、魔方陣を空へ描いている少女がロックへ笑いかけた。
「こんにちは。騎士様。初めまして」
「君が噂のアンナだね。よろしく」
色素の薄い茶色の長い髪が風になびく様は、童話に聞くような王女の可憐さを醸し出している。実際は可愛いだけではなく、強い王女様のようだが。
「うふふ。よろしく。ソフィアの騎士様」
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