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一
ルーン魔法学園にある音楽塔の最上階では、窓辺によって夕日を眺める女子生徒がいた。その生徒は、魔竜姫のソフィア。頭には大きな角、背中に生える醜い大きな翼と、スカートから覗く尾。周りの女子達とは違う見た目に、昔は、嫌で、嫌で、仕方が無かった。それも、ここで出会った出会いが変えてくれた。あの頃よりは変われた筈だ。
室内へ視線を戻すと一台のピアノが中央へ置かれている。彼女とはよく一緒にピアノを弾いていた。
「アンナ、まだ帰って来ないのかな? どんな事をしてるのかな?」
ほんの少しの別れだと言うのに、懐かしそうに目を細めながら、遠くの国へ留学をしに行った親友の姿を思い浮かべる。校門で手を振りながら元気よく「行ってきます」とアンナは友達のエディと一緒に留学する為に外へ出て行った。二人がいない間、寂しくなかったと言えば嘘になる。しかし、それも二人が帰って来るまでもう少しの辛抱だ。
――早く、帰って来ないかな?
もう一度夕日に染まる美しい学園を見下ろそうと、視線を下げると、授業を終えた学生達が寄宿舎へ向かう姿が見える。ただ、寄宿舎へ向かう生徒とは違う動きをする集団もいた。何かの活動だろう。この時は、特に気にも留めなかった。
二
「ちょっと、もう少し早く歩けないの?」
高い声で叱咤する彼女は人の魔術師、名をサフィアと言う。赤いドレスを良く好んで着ている彼女は、後ろからのんびりついて来る者へ、腰に手を当てたまま叱咤する。
「ちょっと、ちょっと、騎士様。もうちょっと早く歩けませんことぉ?」
「そう、嫌味を言うなって、目的地はすぐそこだろう?」
サフィアの後ろを歩くのが騎士と呼ばれた男、世界一の騎士を目指す男、名をアロックと言う。呼びにくい、覚えにくいと言う理由でロックと呼ばれている。
――それにしても、サフィアのやつ、酷い顔だな。
サフィアは不貞腐れた表情で視線を目的地へ向ける。二人の目指す先にあるのはルーン魔法学園。緑豊かな美しいその学園は、魔術師達の登竜門として名高い。
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