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――もう私は、ただ、甘えない。隣に立つのに相応しくなれるよう、強くなる。
そんなやり取りをしている二人から離れてサフィアは溜息をつく。
「いつも思うけど、男女関係なく、良くも悪くもモテるのよね、あいつ。はぁ」
敵に執念深く追い駆けられたり、最初は仲が悪くても最後は友情を育んだり、異性から好意を寄せられたり。
視線を他へ移せば、ロックへ好意を持っている者達が近づいて来た。
「騎士様、ここにいましたのね。探しましたわ」
「騎士様、手伝ってくれてありがとう」
上級生と思われるエルフの少女とアンナが手を振りながらロックへ呼び掛ける。その二人の後ろにはエディと青い髪の青年がじっと様子を伺うように見ている姿があった。
サフィアは更に溜息をついて、思わず呟く。
「やっと二人っきりになれたと思ったのに……」
サフィアは強制的な行動へ出る。
「ほら、そこ! 口じゃなく手を動かして! さっさとしないと、夕方を通り越して、夜になるわよ!」
「わ、ワタクシ、まだ騎士様と……」
「私もいっぱい話したい」
「さっさと持ち場へ戻れ、後輩共!」
サフィアに促されて三人の少女達と、少女達に囲まれたロック、近くにいた青年二人も慌てて動き出す。
一輪車を持ってがれき置き場へ行こうとしたロックに近寄り、サフィアは小声で言う。
「ここを手伝うのは一週間まで。それを過ぎたら別の所へ行くわよ」
サフィアは懐に仕舞っていたチラシをロックへ見せる。近々、大規模な空軍の訓練が開催される予定らしく、腕に自信のある方、興味のある方の参加を歓迎すると言う内容だった。恐らくは新しい空軍の隊員募集の意図もあるのだろう。
「空か……興味があるな」
ロックがピアノを持ち上げて歩いているソフィアの背中を見た。サフィアも見た。あの時、あの翼が空を切り裂き飛んだ姿を思い出す。
ソフィアは隣を歩くアンナと楽しそうに笑い合いながら去って行く。あの二人がいる限り、学園はもう大丈夫だ。
「さてと、次の目的地は空軍の訓練所だな。楽しみだな。その前にがれき撤去を頑張らないとな」
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