後編

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プロローグ  美しい青空、白い雲、吹き抜ける強い風。ここは遥か上空を飛ぶ船空挺の甲板。  ウィンズ国の空軍の実戦形式の公開訓練の真っ最中。空軍に興味がある者、訓練内容に興味がある者。様々な意図を持って参加する外部の者達が空軍の隊員の中に交じっている。その中に、世界一の騎士を目指す青年と、傭兵の女魔術師の姿もあった。 「思ったより大砲の衝撃って少ないんだな」 「海の上を走る船と比べると?」 「そうだな。多分、同じくらいじゃないか?」 青年の返答に興味なさそうに「ふぅん」と返した赤いドレスの女の名がサフィア。のんびりとしている騎士の名がアロックと言う。青年に関しては呼び辛いと言う理由で、ロックと言う愛称で呼ばれる事が多い。 「よぅ、お二人さん。調子はどうだい?」  海賊のキャプテン帽をかぶる顎髭の軽薄そうな男が後ろからロックの肩を叩く。  歯をむき出しに笑う彼は、これでも一応、ウィンズ国空軍の総司令官である。 「あー、ぼちぼち?」 「何だ、はっきりしないなお前は。空は良いぜ、空は。なぁ、お前。筋が良いし、俺はお前が気に入ったし、いっそう、このまま軍に加われよ。訓練終了後に入団希望者の手続きがあるからな」 「まぁ、考えておくよ。一応」  苦笑を浮かべたロックを気にする事無く、総司令官は豪快に笑いながら持ち場へと戻って行った。その後ろ姿を見ながらサフィアはぽつりと漏らす。 「あんたって、男にも女にもモテるわね」  隣にいたロックの耳に届き、ロックは溜息を付いた。 「……サフィア、男に関しては友情と言ってくれ」  どうやら、ウィンズ国最大の行事ももうすぐ終わるようだ。訓練の終わりを告げる為、総司令官が拡張期を手に甲板へ振り返りながら話し始めようとした。その時だった。 「大変です! 天空島の竜騎士の一団と、見た事も無い魔物の群れが此方へ近づいてきてます!」  空の彼方から近づいて来る黒い空。あれが全て魔物だと言う。数千と言う数が押し寄せて来ているのだ。下は海、陸は彼方。逃げ場はない。取るべき道は一つ。 「チッ。しゃぁねぇなぁ。やり合うか!」  総司令官の悩みは一瞬、次の瞬間には笑う。「全空挺へ告ぐ! 全力で敵を打ち落とせ!」号令のもと、空軍と腹をくくった傭兵達が正面の敵へ向かって、時の声を上げる。
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