後編

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一  豊かな自然溢れるルーン国にあるルーン魔法学園。そこは、一流の魔術師を世に送り出している世界で最も名高い名門である。ただし、現在は先日の煉獄界からの襲撃による破壊された学園の修繕中だ。  あれからもう一ヶ月たった。大部分が修理され、戦いの痕跡は殆ど残ってはいない。一番被害の大きかった音楽塔が残されているだけだ。そんな事情から一週間前から授業は再開され、学園の修繕は町の大工さん達が請け負っている。 終わりは近い。音楽塔を見上げたソフィアは大きく背中を伸ばす。その時、アンナが叫んだ。 「あ! そうだ。ソフィア。私、図書館から借りていた本を返すのを忘れちゃったわ。ちょっと返しに行って来る!」 「私も着いて行こうか?」 「私一人で大丈夫! もう、ソフィアは心配性なんだから」 笑って背を向けて走り出す。ソフィアは思わず苦笑する。こう言う所だけを見ていると、このルーン魔法学園の王女であり、学園一の秀才だとはとても思えない。  ソフィアはアンナがそのままにしていった弁当箱の蓋と閉じると、ベンチの背もたれに体を預けた。瞼を閉じて昼間の庭園を駆ける風に身を委ねる。  図書館の前で、先日の煉獄界の襲撃の際友達になったイリスと会った。先輩であり、生徒会長でもある彼女は昼休憩の間も何かと忙しそうで、簡単な挨拶だけをしてさっさと話しを切り上げた。その帰り、ふとアンナは廊下の隅に集まり小声で会話をしている教師の姿に気付いた。何故かアンナは咄嗟に気配を消して物陰から様子を伺う。
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