後編

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 闇魔術のラフォード、聖魔術のミラージュ、魔術学のスティーブ教授。その輪に遅れてエディの姉であり、音楽の教師でもあるエルダが加わった。四人の深刻そうな表情と、スティーブ教授が教授の部屋へ三人を招き入れる様子を見て、ただ事ではない。そう確信を持つ。 教授に気付かれないよう細心の注意を払って、風の魔術を使って離れた場所から音を拾うとしたが、やはり何か重要なことを話しているようで、結界が中から張られているようだった。 「マナから伝わってくる音の反響を拾って解析するしかないわね」  マナは何処にでもある。世界中にマナが廻るからこそ、この世界は存在できるのだ。そのマナの流れまでも結界で完全に遮断する事は出来ない。出来るとすれば、この世界にたった一人だけだろう。  本来だったらただの面倒で回りくどい解析魔術も、今は中で何が起こっているか知る事こそが重要なのだと、アンナは気合を入れて解析を始めた。  いくつかのキーワードが拾えた。「煉獄」「魔物」「救助要請」「ウィンズ国の空軍」。 ――空軍の飛空艇が煉獄界の魔物に襲われているって事?  アンナの記憶の中から、最近飛空艇の話題が思い出される。 「ウィンズ国の航空艇って、確か騎士様が参加しているんじゃなかったかな? 大変、助けに行かないと!」  勢いよくアンナは立ち上がり、術を解いた。その時、解き方が荒かった為にマナが乱れ、教授の部屋から慌ててラフォードが姿を見せた。 「あ、アンナ君! ちょっと、待ちたまえ!」  教師の制止を振り切ってアンナは駆け出す。 二  ――アンナ、遅いな……。  ソフィアは後方にそびえ立つ時計塔を見上げた。  ここから図書館までどんなにゆっくり歩いたとしても、十分かかるか同課の距離にある。それにもかかわらず、二十分以上経過し、未だアンナの姿が見えなかった。もうすぐ昼時間も終わりを告げようと言う、そんな時、聴覚が優れているソフィアの耳に近づいて来る足音と、ソフィアの名を呼ぶアンナの緊迫した声を捉える。  ――ただ事じゃない!  膝に乗せていた殻のお弁当箱を跳ね飛ばし、素早く立ち上がったソフィアはアンナの声が聞こえて来た方へ――図書館がある方へ――走り出した。
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