前篇

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「はい、先生達もお気をつけて」  ロックはミラージュとラフォードに背を向けると、サフィアと共に奥を睨む。 「行くぞ、サフィア」 「えぇ、ロック。貴方の後ろは私に任せなさい」 「あぁ、任せた」 二人は非難する生徒の波を駆け抜けながら校舎の奥を目指す。奥まで来ると生徒の姿は途切れ、代わりに魔物の姿が増えてきた。この校舎内にある召喚門の発見と、魔物の軍勢を減らす事。ロックは剣を抜き一体一体一撃で確実に仕留めながら進む。すると前方に騎士のような姿の魔物と、それと対峙している金髪の生徒らしき姿が見えた。対峙している女子生徒の背には小さい翼と頭には角が生えている事が遠目でも認識できた。そして、その生徒の足元には、小さい子供の姿も見える。 「そこ、動かないで! 《爆炎》」  サフィアは赤い宝玉がついた杖を魔物へ向けると、宝玉から炎の球が生まれ、真っ直ぐ飛んで行く。当たると思った刹那、魔物も手にしていた剣で炎の球を切り伏せた。  しかし、攻撃はそれだけではない。サフィアの援護を得た生徒が、消滅寸前の炎を壁にして、死角から魔物の騎士へと躍り掛かる。鋭い爪を持つ人ならざる腕、その右手の爪が騎士目がけて振り下ろされた。  完璧なタイミングと思われた攻撃を魔物は刀身で防ぐ。  生徒の金色に輝く瞳が怒りの炎を宿す。すると、頭の角が光を帯び始めた。 「アンナとの、思い出の場所を私が守る! 絶対に、あなた達に奪わせない!」  魔物の剣と、生徒の鋭い爪が擦れて火花を散らす。 「こっちだ!」  生徒の方へ集中していた魔物へ接近したロックがワザと声をかけ、注意が散漫になった魔物の腕を狙って下から切り上げる。寸での所で回避した魔物へ生徒の追撃が加わる。  ――良い反応だ。  魔物が呻いた。生徒の爪が深々と抉り、魔物が身に着けていた甲冑の下へ届いたのだ。この場は不利と判断を下したらしく、魔物は身を翻し、逃走する様子を見せた。 「待て! 深追いはするな!」  生徒が魔物の後を追おうとするが、ロックが腕を掴んで止める。「何故」と言う表情を浮かべたのでロックは「救助が先」と付け加え、下を見た。まだ小さい生徒がまだ足元に座り込んでいたのだ。生徒もそれに気づき、後を追うのを諦めてロックへ向き直る。
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