479人が本棚に入れています
本棚に追加
/335ページ
「・・以前から聞いてはいました。だが、なぜそう呼ばれているのか私は知らない。理由も知らずに、我が部下を叱るのは気が引ける・・・故、なぜ異端と呼ばれているのか教えてはいただけませんか」
レオナはとてもまっすぐな声でそう言いきった。
アロイスは振り向かない。振り向かないではいるが、少しだけ感心した。
周りがざわめく。
サークスフィード隊長がご乱心なさられたと、悲痛な声も聞こえる。
だが、レオナはじっとアロイスを見たままその目線を反らさなかった。
何故、異端と呼ばれているのか。
知らないはずはない。
けれども、レオナが嘘をついているとも思えない。
「・・・それは」
乾いた喉がはりつき、掠れた声が出た。
あの歴史を話すことはできない。少なくとも、核に触れることになればリラ王国は滅びる。リラだけじゃない。世界が滅びるかもしれない。
そんなことはできない。
アロイスはぎゅっと目をつぶった。
「・・・知らなくて、良いことです」
俺一人ですむのなら、これ以上の幸福はない。
偽善者?自己犠牲?上等だ。
「なぜです!?良いか悪いかなど私が決めることだ!」
レオナの激昂にアロイスはなにも答えなかった。
レオナに向かって一礼をする。そして無言のままそこから出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!