2.殺意と敵意

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「・・以前から聞いてはいました。だが、なぜそう呼ばれているのか私は知らない。理由も知らずに、我が部下を叱るのは気が引ける・・・故、なぜ異端と呼ばれているのか教えてはいただけませんか」 レオナはとてもまっすぐな声でそう言いきった。 アロイスは振り向かない。振り向かないではいるが、少しだけ感心した。 周りがざわめく。 サークスフィード隊長がご乱心なさられたと、悲痛な声も聞こえる。 だが、レオナはじっとアロイスを見たままその目線を反らさなかった。 何故、異端と呼ばれているのか。 知らないはずはない。 けれども、レオナが嘘をついているとも思えない。 「・・・それは」 乾いた喉がはりつき、掠れた声が出た。 あの歴史を話すことはできない。少なくとも、核に触れることになればリラ王国は滅びる。リラだけじゃない。世界が滅びるかもしれない。 そんなことはできない。 アロイスはぎゅっと目をつぶった。 「・・・知らなくて、良いことです」 俺一人ですむのなら、これ以上の幸福はない。 偽善者?自己犠牲?上等だ。 「なぜです!?良いか悪いかなど私が決めることだ!」 レオナの激昂にアロイスはなにも答えなかった。 レオナに向かって一礼をする。そして無言のままそこから出ていった。
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