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物心がついたときにはすでに、俺には両親がいなかった。
あったのは生活必需品しかない粗末な小さな小屋。
そして、頭のおかしいくそばばあだった。
そのくそばばあから俺の中にいる“何か”の正体を聞いた。
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それは、黒い鬼。
途方もない力を秘めた
忌むべき獸でございました。
何百年かに一度、王族の中で坊っちゃんのように身体に鬼を抱えて産まれてくることがあります。
それは、遠い昔ーリラの血族がとても重い罪を犯したからです。
その罪を知っているのは、リラ王家の当主のみ。それ以外の人には決して耳に入れられぬようになっております。
良いですか、坊っちゃん。
その黒い鬼は、常に、貴方の中に居ることを忘れてはなりません。
鬼は貴方を乗っ取り、復讐を果たそうとします。
貴方が少しでも憎しみを感じたりすれば、鬼はその高鳴った感情を敏感に察知し、貴方を飲み込もうとします。
そんな忌むべき獸を身体に飼った坊っちゃんを、多くの人が蔑み恐れることでしょう。
ですが、貴方は人です。人間です。
どうか、それだけは忘れないようにしてください。
ばばあは、そういった。
そう言った次の日、ばばあは死んだ。
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