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まだ幼かった俺には、その意味が分からなかった。
だからばばあが死んだそのときも、泣くこともなくただ呆然とその様を見ていた。
だけど、間も無くして俺はその意味を嫌でも理解した。
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俺が7つになったとき、城から迎えがきた。
それは、父と母と言われる人たちが俺を育てようと決めたからだったらしい。
だけど、そのとき俺は感情を無くしていた。
泣くこともなく、笑うこともなく、ただ与えられたことを淡々とこなしていく日々を送っていた。
「父上と呼びなさい」
「母上と呼びなさい」
城について早々とそう言われたのを覚えている。
よく知らないおばさんとおじさんが、不安げな顔をしてこちらを見ていた。
俺は冷めた感情のまま頷き、言った。
「父上、母上」
そしたら、二人は急に俺に抱き付いてきた。
不意なことに、なにも反応できなかった俺は、なすすべもなく後ろに倒れた。
父上と呼んだおじさんも、母上と呼んだおばさんも、二人とも泣いていた。泣きながらごめんなさいと、何度も謝っていた。
「・・・俺は、鬼を飼っていますよ」
小さな声でそう言った。
すると、二人ともピタリと泣き止んだ。周りも嘘のように静まり返っていた。
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