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「許してほしいなんてことは言わない。そんなことも思わないわ。
でも、私もお父様も、貴方を城から追い出したその時からずっと後悔していた。そして、貴方をずっと愛していたわ」
母上の透き通るような目が涙でいっぱいになる。
「・・・そんなの」
都合のいい言葉じゃないか。
と、続けようとした瞬間ー俺の頭にあることが過った。
それは毎月届けられていた名もなき人からの贈り物のこと。
それは菓子であったり、洋服であったり、本であったりした。
ばばあが黙ったまま俺に渡してくるから俺も何も聞かなかったし、知ろうとも思わなかった。
今考えれば不思議な話だが、あのとき俺は何一つ不審に思わなかったのだ。
「贈り物・・・」
「なんだい?」
俺は二人の顔をじっと見つめる。
「毎月届けられていた贈り物は、あなた達からだったんですか?
俺の問いに二人は驚いた顔をした。意味ありげに二人で顔を見合わせると、嬉しそうに微笑んだ。
「あぁ。そうだよアロイス。」
「せめてもの償いになれば、とグゥイネスに頼んで貴方に届けさせていたの」
その言葉を聞いた瞬間、肩の荷というか、今まで張りつめていたものが切れた気がした。
気が付くと俺は無言で、いくつもの涙を流していた。
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