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急に泣き出した俺に、二人は目で見てわかるほどに動揺していた。
「・・・あ、アロイス?どうかしたのかい?どこか痛いのか?」
「あなた!もしかしてこの子怪我をしてるんじゃないの?すぐに医者を」
「違います。違うんです」
上擦った声に、二人は動きを止める。母上の腕が、俺の背中を優しく撫でていた。
「嬉しかっただけです。俺は、ずっと一人だと・・・そう思ってたから」
「・・・一人になんかさせないわ」
「・・・もう二度と、辛い思いはさせないよ」
いっそう激しく泣き出した俺を二人が包み込んだ。
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鬼は、確かに俺の中にいる。
でも、鬼を飼った俺をー家族は愛してくれた。
それでも俺は人だと、家族はそう言ってくれた。
独りぼっちの黒鬼は、もう二度と独りぼっちになることはないと。
歴史の中で、鬼を飼ったリラの王家の者は皆処刑された。殺せば、鬼を飼った事を世間に晒さなくてすむのだからそれは当たり前のことなのかもしれない。
だが、そこに自分が望んでないにも関わらず鬼を飼ってしまった『人』の意志はなかった。
当たり前のように『人』は殺された。
王家の歴史で鬼が『人』に認められたことはなかった。
だが。
ここで初めて、鬼は人になったのだ。
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