479人が本棚に入れています
本棚に追加
/335ページ
家族が俺の傍にいてくれるようになって、およそ3ヶ月がが過ぎた。
俺は、父さんから鬼の話をされた。
鬼とはなんなのか。
なぜ、リラ王家に鬼が憑かれるようになったのか。
鬼がもたらす被害とはなにか。
本来なら当主にしか教えられないその秘密を、父さんはあえて、俺に教えた。
多分だけど、父さんはリラの面子を保つことよりも俺のことを第一に思ってくれたんだろう。
それは、途方もない物語だった。
聞き終わり、茫然とした俺に父さんは言った。
ー鬼は必ずお前を飲み込む。
それは、もう逃れられないことなのだと。
そして、そのときがくれば私たちはお前を殺すことになるだろうと。
覚悟を決めておけと言われた瞬間だった。
当時は7歳だった俺でも、その時には分かった。つまり父さんはいつでも死ぬ準備をしておきなさいとそう言ったのだ。
父さんはすごく悲しそうな顔をしていた。何度も何度もすまない、と謝っていた。
でも俺は笑って首をふった。
別に強がりでもなんでもなかった。本当に良かったのだ。
本当ならば産まれてすぐに殺すのが当たり前だったこの命を、生かせてくれた。しかもあろうことか愛してくれた。
鬼に食い破られれば鬼はリラ王家の者を一人残らず殺すだろう。先程聞いたばかりだからわかる。鬼の恨みは相当根深い。
そんなことにはさせない。
この優しい家族を守りたい。
最初のコメントを投稿しよう!