はじめはみんな、友だちだった。

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死刑ごっこ 1.A子とB子、そしてC子は小さな頃から、ずっと仲良し。   お互い、最高の友だち同士だった。 2.トイレに行くのもいっしょ。   カラオケに行くのもいっしょ。   男の子たちとデートをするのもいっしょ。   つまり、ずっといっしょだった。 3.三人が中学生になって、初めての夏休み。   ヒマを持て余していたA子が言った。   「ねぇ、みんな。最近、ちょっと刺激不足じゃない?」 4.B子とC子はうなずいた。   だって、三人はいつもいっしょ。   A子が退屈なら、二人だって退屈だ。 5.「何か面白いこと、やってみようよ」   「面白いことって?」   首をかしげるB子とC子。   クスッと笑ってA子は言った。   「そうね。たとえば……、自殺ごっことか」 6.「ヤだよ、そんなの!! ふきんしん、じゃない!!」      ギョッとして、声を荒らげたのはC子だった。   普段はおとなしくて、口数も少ないC子。   思いがけない反応にA子はおどろいた。   そして、ちょっとだけムカついた。   なによ、C子ったら、ムキになっちゃって。   ほんの冗談だったのに。 7.何だか白けてしまって、その日は三人とも何も言わずに別れてしまった。 8.三人の関係が変わったのは、次の日。   A子とB子は学校で待ち伏せて、C子を階段から軽く突き飛ばしてみた。   踊り場に大げさに転んだC子に向かって、A子はイジワルく言ってやった。 「あらら、C子ちゃん。あんた、あんなこと言っといて、やっぱり自殺ごっこやりたかったんじゃないの」 9.アッという間だった。   クラスのみんながC子の「自殺ごっこ」の面白さに気がついたのは。   それからは、クラスみんなでC子の「自殺ごっこ」につきあってあげることにした。 10.クラス全員でC子の顔を叩いてみたり……。   机の上に花びんをおそなえしてみたり……。   黒板消しを投げつけて、C子の制服を真っ白にしてみたり……。   C子の口のなかに落ち葉やら、虫の死がいを突っ込んでみたり……。 11.そんなことを半年ほど続けたある日。 12.C子が死んじゃった。   屋上から飛び降りて、C子は死んじゃった。   ごっこじゃなくて、ホントの自殺だった。 13.それからは大騒ぎだった。   A子たち、C子のクラスメイトたちがやったことは、日本じゅうに知れ渡っちゃった。
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