崩壊の足音

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「構わないよ。いっておいで。」 俺はそう言ったが、どこか違和感を感じていた。 自分で言うのもおかしいかもしれないがウチは仲のいい夫婦で、共通の休みがあればいつも一緒に出掛けていた。 それは何か夫婦の決め事としてやっていたことではなく、ましてや俺が強制したものでもない。 むしろ「こんど○○行こうよ。○○食べたいな~。」といったデートプランの多くは妻が持ちかけていた。 几帳面な妻は、だいたい3日以上前から予定を俺に伝えることがほとんどなのに、この日は俺との予定をドタキャンに近い形で持ってきたこの話… そもそも家庭を持つ女同志が、明日会おうよなどという話が急にまとまるものだろうか? そしてもう一つの違和感は、朝の9時に待ち合わせというところだ。 俺の住む街はけっこう田舎の部類で、朝9時では女性二人で遊んだり話しができる店などどこも開いておらず、もちろんそのショッピングモールも営業時間前なのだ。 急にフリーになってしまった火曜日。 俺は衝動を抑えられなくなった。 そうすることで人生最大の事件を目撃することになるとも知らずに…。
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