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夜が怖い。
音のない暗い世界は、俺の憂鬱に拍車をかけ、毒の沼にでも沈んでいくような気分になる。
それを破ろうと口を開けば、ついつい妻を攻撃する言葉が出てくる。
「どうして何も言わねぇんだ?」
「だって…何を言っても言い訳にしかならないから…。」
「言い訳でもいいさ。
俺はもうこんな想いをしたくない。
今後こうならない為にも、これからの反省の意味でも、お前があんなことをした理由が知りたいんだ。」
「うまく言えないよ…。
それに上手く表現できる自信がない。
私が本当に思っていたことと違った伝わり方になってしまうのが怖いの。」
「俺さぁ…今回のことがあってから、お前のこと愛していたんだなぁって改めて実感できたよ。
ちゃんと伝わっていなかったかもしれないけど。」
「…。」
「毎日、なんでもない時間ってあるだろ?テレビ視てるときでも、仕事の合間でも。
そんなとき、ふとお前を思い出す瞬間ってのがあってさ。わかる?」
「…わかる。私もあなたのこと思い出すよ。」
「そんなとき…やっぱ幸せな気分になれたんだよね。
頑張ろう!とか、今度はどこに連れて行ってあげようか、とかね。」
言葉の端々が過去形になってしまう。
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