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「きっと久しぶりだったからだよ。」
妻はそう言ってくれたが、次の日も同じだった。
何かがおかしい…。
俺は性的なものや不倫を匂わせるキーワード、それに女を蔑むあらゆる言葉に過剰なまでに敏感になっていた。
最悪なのはコンビニの前に立つと見える成人雑誌の裏刷り広告。
「淫らな人妻に出会って中出し」なんてのを見かけたときにはガラスを叩き割りたくなった。
これはいよいよヤバイ。
でもそのことは妻には言わずにいた。
これまでの会話のやり取りを考えれば、関係修復するうえでは妻にとってはプラスにならないことは容易に想像できたからだ。
いっそ俺も浮気しちまおうかなぁ…。
実は少し以前に、俺の事を既婚者と知りながらもかなりストレートな告白をしてきた若い女性がいた。
仕事を通じて知り合った彼女の家までは車で移動すれば10分もあれば行く事もできる。
でも、それはできなかった。
それだけに簡単に裏切りに走った妻を思うと「俺ってどんだけ疎まれていたんだろう…」などと思ってしまう。
子どもらの為に夫婦を続ける事で合意した俺たちだけど、それでも離婚したほうが楽なんじゃいかという悩みはこの頃から今までずっと続いている。
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