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俺は男としての自信を完全に失っていた。
妻を寝取られ、いつまでも嫉妬心を振り払えず、早漏になり、あげくに精神的に参ってしまって仕事も手につかない。
ゴミのような時間を過ごしていた。
かつては辛いときに妻の笑う顔を思い出していたけど、今は妻を思い出せば苦痛でしかない。
そんなときは子どものことを思い出すことにした。
もう少し早く子どもを思い出す方法に気が付いていれば、仕事も辞めずに済んだかもしれない。
そうだ。
俺は男としてではなく、父親として生きなければならない。
頑張ろう。
頑張るんだ。
結局、気持ちが空回りしたり、浮いたり沈んだり…あと普通に面接が不採用になるなどして、夏休み丸々を専業主夫として過ごす羽目になるんだけど、苦しみと責任感の板挟みのこの頃は精神的な意味合いでは妻の不倫を知った直後よりもキツかったかもしれない。
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