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第一話『クランケのおはなし』
ここはどこかなぁ? って、さいしょにおもったのはそれだった。
おれをつつんでいたやわらかいえきたいも、あたたかいおんどもぜんぜんなくて、さむくてこころぼそくて、おれはなきそうになった。
そしたらね、こまったようなこえがしておれはかおをあげた。めのまえにはこえとおなじように、こまったかおをしてるおとこのひとがいたんだ。
「おいおい、泣くんじゃねぇぞ、ほら! ミルクか? 眠いのか?」
「一応身体的には小学生程度ですからミルクじゃなくてもいいのでは? しかし、意外とパパぶりが板についてますね」
「やかましい!」
くるくるかわるそのかおがおもしろくて、じっとみてたらそのひとはおれがどなりごえがこわいのかとおもったみたい。
くちをとじて、しばらくまよったあと、わらっていったんだ。
「あー、まあ偶然とはいえ生まれちまったんだもんなぁ……この世界へようこそ。歓迎するぜ」
そのことばとわらったかおがやわらかくて、あったかくて、おれはつつまれてたころをおもいだした。
こういうときはどうすればいいのか、おれはしってる。
おれはあいさつをめいいっぱいかえすように、わらったんだ。
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