凶報

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「…おい、お前ら、運動の時間だ。グラウンドに出ろ!」 一人の刑務官が扉を開け、小部屋にいた3人の男に叫ぶように言った。 1人は鍵村明夫(かぎむらあきお)という、頭のてっぺんが少しはげている、もうすぐ還暦を迎える男、1人は幡多修三(はたしゅうぞう)という、細い体つきで、気の弱そうな男、そしてもう1人は、屈強な体つきで、力のありそうな男、冴田鴉紋(さえだあもん)…だが、3人に共通して言えるのは、全員坊主頭だということだ。 この芦原刑務所では、男の囚人は、全員坊主頭にしなければならないきまりだ。 「行きましょう、皆さん…」 「そうだな…行くぞ、冴田」 修三はどうも鴉紋に直接的に声をかけられないようで、さりげなく明夫に鴉紋を連れ出してくれ、と頼んでいるようにも見えた。 隅で腕組みをしていた鴉紋は、一言も発することなく、立ち上がった。
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