60人が本棚に入れています
本棚に追加
(ぐぅ…力があまり入らへん…こらさっさとやらへんと、俺が持たんわ…)
鴉紋は震える拳を見ながら、そんなことを考えていた。
熊は、鴉紋に考える隙を与えなかった。
熊が2本足で立ち上がり、その大きな腕を振り下ろしてきたのだ。
考え事をしていた鴉紋は、咄嗟に避けたが、脚がまともに動かず、囚人服は破れ、皮膚も切れ、血が出た。
「ぐぅぅ…」
引っ掻かれた傷をおさえながらも、鴉紋は熊を視界に捉えた。
熊は畳み掛けるように、今度は腕を下方から鴉紋の顎目掛けて振り上げてきた。
本調子の出せない鴉紋は、避けるので手一杯だった。
「クソォ…早よやらんと…修三も探さなあかんのに…!!」
鴉紋は苛立ったが、迂闊に動けば食われることくらい、頭では分かっていた。
最初のコメントを投稿しよう!