真夜中の逃走劇

10/11
前へ
/690ページ
次へ
ところが、凍傷で意識もまばらになり始めている今は、熊を見付けることは、困難を極めた。 「クソッタレが…」 鴉紋は怒りさえもおぼえた。 吹雪が一層強くなってきた。鴉紋の体も次第に凍ってきていた。 それを知ってか知らずか、鴉紋の背後から熊が鴉紋を食おうと、襲い掛かってきた。 「後ろか!!」 鴉紋は直前で気付くと、それを避けた。 熊はさらに、自分の頭で、鴉紋を空中に打ち上げた。 「ぐあぁ!!」 熊は落ちてくる鴉紋を食おうというハラだった。 (今しかないで!!) 鴉紋はこれを、反撃に転じようと考え、空中で拳を構えた。 熊はうなり声をあげながら、食おうとするのをやめ、再び腕で攻撃をしようとした。 その攻撃は、鴉紋の頬をかすめ、鴉紋の頬に切り傷をつけた。
/690ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加