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「…起きたか…」
男は小さい声で呟いた。鴉紋はゆっくりと体を起こした。
「あまり動くな。ひどい凍傷だ…迂闊に動けば、腕や脚が落ちるぞ」
男は落ち着いた調子で言った。そして、再び鍋の方に目を向けた。
「あんたは?…ここはどこや?」
鴉紋は何が何だか分からなかった。自分の体には、包帯が巻かれていた。
男は取り皿に鍋の料理を取って、鴉紋に渡した。鴉紋は何も言わず受け取った。
「食え。体力の回復にはなる」
男は自分の分を取りながら、呟くように言った。
「…おおきに」
鴉紋はお礼を言うと、少しずつそれを食べた。
「しかし、驚いたな…たまたま夜の見回りに行ってみたら、人が倒れてたんだもんな…」
男は微笑しながら、鴉紋を見て言った。
「そや。ここはどこや?」
鴉紋は思い出したかのように男に聞いた。
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