麓の村

5/10
前へ
/690ページ
次へ
「ここは、狩った獲物の毛皮なんかをたまに来る業者に売って、生計をたててる村だ。ここにしばらくいるつもりなら、お前も猟を身に付けることだな」 男はそう言うと、立ち上がった。 そして、先程片付けた猟銃や防寒具を装備すると、家のドアに触れた。 「…そういや、まだ礼を言うとらんかったな」 鴉紋が男を呼び止めた。男は振り向かずに聞いていた。 「あんたがおらんかったら、俺は今頃熊の餌食やったわ…おおきに」 鴉紋は頭を下げた。男は特に大きな反応を見せず、冷静だった。 「俺は冴田いうもんや…あんたは?」 「………俺は、荒間だ」 荒間はかなり間をおいて名乗った。
/690ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加