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準備が終わった憂が小走りで駆けてくる
入り口で憂を待っていた亮が
「ゆっくり歩けよ…」
といった瞬間
憂が案の定足がもつれて転んだ
あー、ほら。
少し苦笑いをしながら亮が憂に駆け寄る
「お前、そんなんばっかだな…」
転んだ憂に手をさしのべる
「……ごめんなさい……」
「コンタクトつくるか?」
亮が優しくそういうと、憂は軽く頭を横にふる
「眼鏡のほうがいい…」
消えそうな声
「そうか?怖いの?コンタクト」
少し笑いながら亮が言う
また頭を横にふる憂
「そうか………」
喋んのも嫌なのかよ……
これ以上は無理だな…と思い、亮は憂の手を引き上げる
「帰るか…」
いつものように、ビル前につけられた自家用の送迎車に乗り込む
ここから憂の家までの道のりはいつも無言だ。
憂は黙って外を眺めている
そんな憂の横顔を黙ってみている
こんなに近くにいるのにまるで別世界にいるような
てをのばせばとどいてしまうくらい近いのに
亮には憂の考えていることが全くわからなかった
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