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 老人の持つ銃口が眉間に向けられる。そして、鉛弾を放つかと思われたが、老人は嘆息を吐きゆっくりとライフルの銃口をアリアから離した。 「背の高い木々が生い茂る森の中で声を放つとな、声は木々に当たり反響するのだ。聞こえた方のとは全く違う場所に、実際に声を出した人物がおる。その位置を判断するにはお前はまだ早すぎる」  老人ダンは淡々と語る。自分の不肖の弟子である少女アリアに向けて。  先ほどまでの戦いは、ダンがアリアに講じた模擬戦闘であった。森に入り互いに違う地点で待機。そして、打ち合わせた時間になったら行動を始め自分を打ち取ってみろという。  アリアは狙撃姿勢を崩し立ち上がった。師であるダンの言葉を、俯きながら聞く。  一つのミスが、永遠の終わりに繋がる。これが戦場。命のやり取り。  自分を戒め、指がある左手で拳をぎゅっと強く握る。 「矢を撃つことは敵に居場所を知らせることにもなる。いかにその場が狙撃に格好の場所と言えど、一度使ったら場所を変えろと再三言っておいたはずだろうが」 「すみません。失念していました」  アリアはダンの位置を確実に捉えていた。だから、動かず狙いを定めていればよい。その過信が今回のミスに繋がってしまったのだ。  ダンはそこで言葉を切り、重い沈黙が流れる。  ダンは人と関わりを持つのがあまり好きではなく、落ち込むアリアに激励の言葉を掛けるような器用なことはしない。ただ静かに黙っていた。  ならばと、先ほどの失態を挽回するためにも、アリアは今回の模擬戦闘で学んだことの発言を試みる。 「そういえば」
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