プロローグ

6/8
前へ
/32ページ
次へ
 漆黒の剣士が、俺の左足目がけて突きを放つ。人間と言うものはどうしても下半身の方が、上半身よりも反応が少しだけ遅れる。その少しが命取りになるのだ。  しかしアトランスオンラインを始め、多くのVRMMOを極めてきた俺にとっては、突きをかわすことなど容易かった。  体を右に倒れるように傾けた。ソニックブリンガーを発動している今、剣で防ぐことはできない。剣と剣が激突した瞬間、互いのスキルは解放され、相殺し合ってしまう。  拳一つ分の距離をあけて、黒い剣が通過する。俺は地面に倒れる寸前の体を右手で支え、スキルを発動する。基本スキル――加速。体はリミッターを超え、すさまじいスピードで移動する。  一瞬のうちに俺は漆黒の剣士の間合いまで入り込んだ。そして、現実世界ではありえないほどの跳躍力で、漆黒の剣士の胸の前まで飛ぶ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加